変形性膝関節症は、様々な原因により発症します。例えば、年齢を重ねることで関節の軟骨がすり減って起こる変形と、軟部組織や骨の外傷によって起こる変形があります。
他にも膝関節周囲にある筋力の低下や、膝にかかる負荷も一つの原因として挙げられるので、運動をして筋力を低下させないことが予防や治療法の一つとして大切です。今回は運動の中でも、ウォーキングについてお話します。
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ウォーキングの効果
運動の中で最も手軽に行えるのがウォーキングです。しかしウォーキングの1時間あたりのカロリー消費は低く、決して即効性の高い方法ではありません。しかしウォーキングには様々なメリットがあります。
まずは運動が不得意な人であっても、ウォーキングができない人は少ないということです。ウォーキングは有酸素運動に含まれますが、他の有酸素運動に比べて膝関節への負担を軽減することができ、運動強度もそれほど高くないため、年配の方や運動が苦手な方にもお薦めです。
ウォーキングの効果としては、血流量の亢進、脳細胞の活性化、脂肪燃焼、筋肉増強、コレステロール値低下、免疫力が上がる、ホルモンバランスの調整、自律神経の調整、骨密度の増進、むくみや冷え性の改善をするなど、多くの結果が報告されています。また、運動不足の解消、生活習慣病の予防効果もあります。
他にも、膝関節を支える組織を鍛えることで膝の痛みを和らげる効果もあり、ウォーキングによって膝関節の痛みが軽減することが医学的にも証明されており、心肺機能の向上などの効果もあります。ウォーキングは歩行時間や場所を選ばず、手軽に行うことができますし、景色を楽しみながら、習慣として続けやすいところもメリットです。
平均的な歩数について
次に、男女年齢別の平均歩数について見ていきます。平成22年に発表された内容ですが、20~64歳の歩数の平均値は男性で約7,636歩、女性では約6,657歩でした。65歳以上では 男性が約5,597歩、女性が約4,726歩となっています。
実は、日常生活における歩数に目標値が設定されており、20歳~64歳は男性が約9,000歩、女性が約8,500歩で、65歳以上では男性が約7,000歩、女性が約6,000歩とされています。目標は男女ともに、平均歩数プラス約1,500歩です。もしこの目標値まで歩いたとすると、NCD(非感染性疾患)発症及び死亡リスクの約2%減少に相当するとされており、血圧も1.5mmHg減少にもつながると明記されています。
運動習慣者の割合について
男女年齢別では20歳~64歳の男性が26.3%、女性が22.9%です。65歳以上は男性が47.6%、女性が37.6%となっており、運動習慣者の目標はプラス10%とされています。もし運動実施者の割合を現状から10% 増加させることができると、国民全体のNCD(非感染性疾患)発症・死亡リスクの約1%減少が期待されます。
年齢階層別の表を見てみると、女性の20代で11.6%、30代で 14.3%と、若い女性における割合が低いことがわかります。若い女性の運動習慣は10人に1人程度であり、男女ともに高齢者のほうが運動に対する意識が高いことがわかります。
では、ウォーキングを始めるにあたっての歩数ですが、6,000~8,000歩が1日の最適な歩数とされているため、まずはこの数字を意識してみましょう。いきなり1日に1万歩も歩くと、疲労が身体に残りやすく、免疫機能が低下しやすい体になってしまいますので、ウォーキングを始めてすぐの方は、1日30分間を目安に、徐々に時間と歩数を伸ばしていきましょう。
あまり長すぎると疲労が溜まり、体に負担がかかります。長時間のウォーキングは、足や腰に負担を与えることもあり、継続して歩くことができなくなるリスクがありますので注意しましょう。また、ウォーキングは歩き始めてから約15~20分で体脂肪が燃焼し始めるといわれ、高血圧、糖尿病、がん、骨粗鬆症などの予防に期待されています。
効果が得られやすい時間帯
ウォーキングの目的に応じて、効果が得られやすい時間帯を選びましょう。健康維持を目的とする場合は、体温が最も高くなる夕方の時間帯がウォーキングの効果が高いです。それに対して、脂肪燃焼効果を目的とした場合は、朝食前の空腹状態でのウォーキングが効果的です。
それはなぜかといいますと、人は運動をしている時、血液の中の糖分を燃焼しエネルギーに変えています。ところが血液の中の糖分が不足していると、脂肪を糖に変換してエネルギーとします。これが運動で痩せる仕組みです。ですから空腹時は血液中の糖分が低い状態であるため、脂肪の燃焼効率が期待できます。
また朝日を浴びることで、集中力を高める働きをするセロトニンの分泌を増加させるため、朝は集中力が高くなるメリットもあります。しかし、朝は体温が低いため、ケガのリスクに注意する必要もあります。
また、ケガ以外の注意点もあります。人は一晩の間に約500mlの寝汗をかいており、朝起きたての状態では水分が不足していて、血液もドロドロです。その状態で行うウォーキングは、心筋梗塞・脳梗塞を起こすリスクがあるため、起床後すぐにコップ1杯の水を飲むこと、起床後1時間以上は時間をあけてから行うようにしましょう。
ただしいウォーキングフォーム(歩き方)
骨や筋肉は、負荷や重力によって強くなる性質があります。そのため、ウォーキングをする際は、ある程度の負荷をかけた歩き方の方が効果的といえます。
理想は中強度の活動が20分含まれているのが好ましいとされています。中強度の運動をするためには、速足を意識するように歩幅を大きくすること、大股で歩くことを意識しましょう。目安としては、普段よりも歩幅をこぶし1つ分広げるイメージです。
ウォーキングの姿勢で大切なのは、あごを引き、頭を揺らさずに目線は約15~20m先を見ることです。お腹を引きしめるように意識しながら、猫背にならないようにし、膝から下を振り出すようにします。手は肘を軽く曲げた状態にして腕を大きめにふり、 腰の回転を意識しながら広めの歩幅で歩くようにし、踵から着地するようにしましょう。
水中ウォーキング
実は走っているときの膝関節には、体重の3倍~5倍程度の負担がかかっているといわれています。例えば体重を60kgとした場合、180kg~300kgもの負担が膝関節へかかることになります。しかしプールでのウォーキングは、陸上を歩くよりも負担を軽減できます。例えば、膝までの水深であれば、体重の30%をカット、腰までであれば50%をカット、胸までなら70%も体重をカットすることができます。
また陸上と水中ではカロリーの消費量にも違いがあります。60キロの男性が1時間水中でウォーキングをした場合に消費するカロリーは、約350キロカロリーとされています。陸上で同じ男性が膝関節に負担をかけない程度のスピードでウォーキングをした場合の消費カロリーは、1時間あたり約160キロカロリー程度とされているので、2倍以上の差があることになります。
実は、水中ウォーキングの歩き方にはさまざまな種類があります。その中で、基本的な歩き方についていくつか紹介をします。
歩幅の広い歩行(レンジウォーキング)
- 肩が水中に沈むくらいに歩幅を広くとります。その際に両腕は大きく前後に振ります。
- この歩き方は、股関節周りのストレッチとして効果的です。
膝を上げての歩行(マーチング)
- 膝をできるだけ高く上げるように意識し、足を着地する時はレンジウォークのように体が沈むまで踏み込みます。
- この歩き方は股関節の運動に効果的です。
膝を広げた歩行(ニーアップウォーク)
- 足を前に踏み出した際に、後ろに残った足を横に90度持ち上げて、前に弧を描くように踏み出します。
- 腰を捻ることで、ウエストのシェイプアップ効果に期待できます。
横歩き歩行(サイドウォーク)
- 進行方向に足を開くようにします。体を水中に沈め、横に向かって歩きます。
- 下半身やお尻の筋力強化に効果的ですし、腕をしっかりと振れば、二の腕の筋力強化も期待できます。
蹴りだしながら歩行(キックウォーク)
- 足を蹴りだす意識を持って歩くようにします。
- 足部やお尻の筋力強化に効果的です。
まとめ
変形性膝関節症に予防・治療法として、手軽に取り組めるウォーキングについて紹介してきましたが、人によっては膝の痛みにより歩行自体が困難な場合があります。また水中でのウォーキングでは膝の負担が軽くなる分、水の抵抗により疲れやすい運動でもあります。
せっかくウォーキングを始めても、痛みの症状が悪化しては意味がありませんので、最初は運動の時間や強度を控えめから始めていき、慣れてきたら徐々に増やすように取り組みましょう。
No.0022
監修:院長 坂本貞範