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変形性膝関節症におけるサポーターの役割
変形性膝関節症になると、痛みや歩行時の不安定感が出てきます。これらの症状を軽減させるために、サポーターを装着する方が多いのではないでしょうか。しかし膝のサポーターには様々なタイプがあり、どれを選べば良いか迷われるかもしれません。そこでサポーターの効果について説明するとともに、サポーターの選び方を紹介します。まずはサポーターの効果についてみていきましょう。
効果 その1:膝の冷え対策、保温効果
夏場の冷房や冬の寒さで膝が冷えると、痛みが感じやすくなる方がたくさんおられます。膝に限った話ではないですが、体が冷えることで血管が収縮して血液の流れが悪くなります。本来、栄養や酸素は血液に乗って全身に運ばれますが、血流が悪くなると酸素や栄養が行き届かず、発痛物質が生産されます。また血流が悪くなるということは、発痛物質(ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミンなど痛みを発生させる物質)や老廃物(毒素や疲労物質などの不要物)が滞ることとなり、ますます痛みが感じるようになります。このように冷えは痛みと関係が深いですが、保温効果の高いサポーターを装着することにより、膝の冷え対策になります。
効果 その2:膝の安定性をアップ
変形性膝関節症が進行すると関節の軟骨がすり減り、膝の安定性が低下していきます。関節軟骨は内側が損傷しやすく、O脚のような内反変形となる方が多いです。この内反変形や筋力低下、膝関節の可動域制限などにより、歩行動作に異常がみられることがあります。特に変形性膝関節症の方では、歩行の際に膝が外側に横揺れする「ラテラルスラスト(Lateral thrust)」という特徴的な症状がみられます。
このような歩行時の不安定性を改善する目的としてもサポーターが活用されます。サポーターの機能により膝を固定することで、歩行時の膝の動揺や痛みを抑えることが期待できるのです。
効果 その3:感覚神経を刺激して、痛みを感じにくくする
皮膚が何かに触れると、触圧覚(しょくあっかく)というセンサーが刺激を感知します。この触圧覚は痛覚よりも早く脳に伝わります。サポーターを装着する効果の一つに、この触圧覚を刺激することで、痛覚の伝達を鈍らせ、痛みを感じにくくする目的もあるのです。
サポーターの選び方
サポーターを選ぶときには、自分の足と合ったサイズのものにしましょう。サイズが大きいと固定力が弱くなりますし、サイズが小さいと血管を締めつけて血流循環を妨げることになるかもしれません。サイズの基準は各メーカーによって異なりますので、測り間違いがないように商品ごとの確認が必要です。一般的には「○㎝~○㎝は○のサイズ」といった表記の仕方が多いです。
次はサポーターの種類についてお伝えします。先ほどサポーターの効果について説明しましたが、サポーターを選ぶときは、目的にあったタイプのものを選びましょう。
一つ目は保温効果が高いサポーターです。市販で売られている商品の中には、備長炭を使用して遠赤外線により保温効果を高めているものや、発熱効果がある繊維を使用したものなどがあります。また保温効果を目的としたサポーターでは、筒状の形になっているものが多いです。
二つ目は膝の安定性を向上させる機能型サポーターです。このタイプには、膝まわりの筋肉をサポートするためにテーピング理論に基づいて作られた商品や、ベルト式やマジックテープでしっかりと固定できるもの、支柱がついていて安定性に優れているものなどがあります。また内反変形がみられる膝では、荷重が内側に偏っていますので、重心が外側になるように設計されたサポーターもあります。
このように一口にサポーターといっても、用途によって種類が様々あります。もしもどれを選べば良いか迷ったときは、整形外科の先生に相談するのもいいかもしれません。なぜなら、変形性膝関節症の場合では、保険が適応された質の良いサポーターが処方されることがあるからです。
使用する上での注意点
機能的な性能がついているサポーターでは、正しく装着しないと本来の効果が発揮されないことがあります。例えば筒状のサポーターでテーピング理論に沿って作られたものでは、上下を逆さにして装着すると正しく筋肉がサポートさせずに、効果が減少するかもしれません。またベルトやマジックテープの装着方法を誤ると、効果が発揮されないだけでなく、痛みの症状を悪化させることにも繋がりかねません。さらに強すぎる締めつけでは、血行不良の原因にもなりますので注意しましょう。
変形性膝関節症の治療にサポーターは有効か?
では変形性膝関節症の方がサポーターをすれば、痛みは無くなるのでしょうか。症状の強さというのは人それぞれで、当然サポーターの効き目も個人差があります。ただしサポーターを装着する上で大事なのは、サポーターを付けることで変形性膝関節症が治るわけではないという事実を認識しておくことです。
確かにサポーターの装着により膝の痛みが軽減することがありますが、サポーターは膝の機能をサポートする装具にすぎず、サポーターにより変形した関節が修復していくということはありません。むしろこの変形性膝関節症は症状が進行していく疾患ですので、サポーターをしていても次第に痛みが増強してくることもあります。
変形性膝関節症の治療には、サポーターによる装具療法だけでなく、その他の治療を併せて行うとより有効的です。特に痛みにより活動度が低下すると筋肉が衰えて、ますます膝が不安定になっていきます。そうなると関節への負担が増え、関節軟骨がすり減るといった悪循環へと陥っていきます。
そこでこの悪循環を断ち切るためにも、運動療法の併用がとても重要です。筋肉を増強させるためには、一定以上の負荷をかける必要がありますが、痛みの症状が出ている方にとっては、筋力トレーニングが困難な場合もあるかもしれません。そのような場合でも、強度の低い運動をすることで、筋力の低下を抑制することができます。
手軽にできて強度の低い運動といえば、ウォーキングをするのもいいでしょう。ウォーキングをすることで、足の筋力が維持できるだけでなく、骨粗しょう症の予防や体重の減量などに繋がります。ウォーキングは強い運動ではないので、可能であればたくさん歩く方がいいのですが、長い時間歩くことが難しい場合は、短い時間を2〜3回に分けて歩いても運動の効果はあります。またウォーキングをする際に、サポーターをつけていれば、運動に対する不安を軽減することができ、少しでも長く歩くことができるかもしれません。このようにサポーターに頼るのではなく、補助的にサポーターを活用して、積極的に運動に取り組みましょう。
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監修:院長 坂本貞範