変形性膝関節症で見られる症状とは

関節軟骨とは

膝関節は太ももの骨である大腿骨、すねの骨である脛骨、そしてよく「膝のお皿」と呼ばれている膝蓋骨によって構成されています。この大腿骨と脛骨の関節面は関節軟骨に覆われており、変形性膝関節症ではこの関節軟骨が、加齢による変性や日常生活動作による磨耗などですり減ってきます。

軟骨とは水分を多く含んだ骨であり、一般的な骨とは違います。この軟骨には、硝子(しょうし)軟骨と線維軟骨の2種類あります。関節を覆っている関節軟骨は硝子軟骨であり、クッション性や摩耗性に優れています。この関節軟骨には神経が通っていないので、もし関節軟骨が傷ついたとしても、痛みを感じることはありません。ところが関節軟骨がすり減ると、軟骨の摩耗片が遊離します。

膝関節は関節包という袋に包まれており、その袋の内側には滑膜と呼ばれる膜が存在します。軟骨の損傷により遊離した摩耗片が滑膜を刺激すると、滑膜で炎症が起こります。この滑膜の炎症反応により、膝を曲げ伸ばしした際に、痛みを感じるようになるのです。

膝 解剖

関節液について

関節包の滑膜からは、滑液あるいは関節液と呼ばれるヒアルロン酸を主成分とした粘液が作られます。この関節液は粘性が強く、関節が動く時に関節軟骨の摩擦を軽減する、潤滑油のような役割となっています。

この他にも、関節液には関節軟骨の栄養分も含まれています。実は関節軟骨には、神経だけでなく血管もありません。血管がないと組織が傷ついた時に栄養が行き届かず、組織の修復ができませんが、血管のない関節軟骨では、関節液が軟骨細胞に浸透することで、損傷した軟骨を修復します。ただし、軟骨は修復能力が乏しいため、軟骨がすり減るまで損傷すると再生は困難となります。変形性膝関節症の場合、ヒアルロン酸の量や濃度が低下していることで、軟骨が修復されにくくなっていることがありますので、関節に直接ヒアルロン酸を注入することも少なくありません。

また正常の膝であれば、関節包の中は約5mlの関節液で満たされていますが、摩耗片が滑膜を刺激すると関節液が増加することがあります。いわゆる膝に水が溜まった状態で、貯留量が多いと、見た目にも膝が腫れている様子がわかります。関節に関節液が溜まると、膝が動かしにくくなるだけでなく、関節内圧が高くなることで痛みも感じやすくなります。

ヒアルロン酸

膝の水を抜くとクセになる?

ちなみに「膝の水を抜くとクセになる」という噂をよく耳にしますが、これは真実ではありません。膝に関節液が溜まるということは、関節液が少なくなったからではなく、滑膜の炎症反応により関節液が増えているのです。つまり関節液を抜いても再び貯留する原因は、関節液を抜いて量が減ったからクセのように増えた訳ではなく、炎症反応が治っていないから関節液が再び生産されたといえます。このことからわかるように、関節液の生産を抑えるには、原因となっている滑膜の炎症を抑える必要があります。

では実際のところ、膝に水が溜まったら抜いた方がいいのか、抜かない方がいいのか、どちらが正解でしょうか?この問いに対しては、症状に応じて対処するのが正解です。先ほども説明しましたように、膝に水が溜まると、膝が動かしにくくなったり、痛みが出てくることがあります。このような状態であれば、関節液の貯留量はかなり多くなっていると推察できますので、関節液を抜いた方がこれらの症状が改善されることがあります。

これとは逆に、触診や問診で膝の状態を確認し、それほど関節液が貯留していないと判断されれば、関節液を抜かずに経過を観察することがあります。なぜなら、関節液が正常より少し多い程度だと、関節の炎症が治れば、過剰に生産された関節液が吸収されるからです。ただし変形性膝関節症だけでなく、関節内での骨折や靭帯損傷といった外傷、細菌の感染、関節リウマチなどでも膝が腫れる症状は現れますので、少しでも気になる時は医師の診断を受けましょう。

半月板の損傷

また大腿骨と脛骨の間には、半月板というクッションの役割をする線維軟骨があります。この半月板は関節の衝撃を和らげるだけでなく、大腿骨と脛骨の動きを滑らかにする役割も担っています。その分、常に半月板には負荷がかかっていますので、重労働やスポーツをしている方でなくても、半月板が損傷することがあります。

半月板は膝関節の内側にある内側(ないそく)半月板と、外側にある外側(がいそく)半月板の2種類があります。半月板が単独で損傷するのは、スポーツなどで膝を捻った時が多く、二次的な原因としては、靭帯損傷の合併症として見られることが多いです。また加齢による変性でも半月板は損傷します。

半月板が損傷し表面が不整になると、膝を曲げ伸ばしした時に関節が引っかかることがあり、完全に膝が動かなくなる場合をロッキングといいます。その他にも膝の曲げ伸ばしでクリック音がしたり、歩行時に膝の力がカクッと抜ける膝崩れ現象が見られることがあります。

変形性膝関節症の場合は内側半月板が損傷を受けやすく、症状が進行すると関節の隙間が狭くなってきます。そうなると関節の適合性が低下し、荷重による衝撃がますます内側に偏ってきて、内側の変形が増大します。変形性膝関節症の方でO脚になっている人が多いのは、こういった理由からなのです。

進行度による痛みの変化

変形性膝関節症の主症状は疼痛です。ただし変形の進行度合いによって痛みの感じ方は変わってきます。例えばまだ変形が進んでいない初期の段階では、強い痛みが出ることは少なく、動き始めや立ち上がり時に膝のこわばりや痛みを感じます。しかし、しばらく動いていると症状が落ち着くため、この段階ではまだ病院へ行くほどではないと思う方が多いです。

ところが症状が進行してくると、それまで休んでいると消えていた痛みが、いつまでも持続するようになります。また歩行時だけでなく、階段を使う時など膝に負担が増える動作が、痛みにより困難になることも多いです。さらに深く膝を曲げると痛みが出るため、正座やあぐらができなくなってきます。また、滑膜の炎症により関節液が増えてくるのもこの時期です。

進行が末期までくると、関節軟骨は完全にすり切れてしまい、軟骨の下にある骨がぶつかり合っています。こうなると見た目の変形が強く、膝の可動域も狭くなっています。また痛みも強く感じるようになり、場合によっては杖や歩行器などがなければ、一人で歩けなくなることも少なくありません。そうなってくると、行動範囲が狭くなってしまい、体力の低下や精神的なストレスも問題となってきます。

膝 進行分類

まとめ

変形性膝関節症になる原因は加齢によることが多いです。つまり、一度症状が出始めると元の状態には戻らず、むしろ進行していくケースが一般的です。ただし少しずつ関節が変形することで、急に症状が悪化するというケースは少ないです。初期の段階であれば高い治療効果も期待できますので、膝に違和感や痛みを覚えたら、なるべく早く治療を開始しましょう。

 

No.0013

監修:院長 坂本貞範

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