変形性膝関節症で行われる最新の注射治療

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変形性膝関節症の注射治療とは

変形性膝関節症の治療は、大きく「保存療法(ほぞんりょうほう)」と「手術療法」に分けられます。保存療法とは、手術をせずに痛みや機能を改善する治療のことです。注射治療は、この保存療法のひとつに位置づけられています。

膝関節への注射治療には、大きく分けてヒアルロン酸注射・ステロイド注射・PRP(多血小板血漿)注射・幹細胞注射の4種類があります。それぞれ目的や効果の出方、費用が大きく異なるため、症状の程度や患者さんの状態に応じて使い分けることが大切です。

膝の注射 種類と特徴の比較一覧

膝への注射治療には複数の種類があります。どの注射が自分に合うか迷っている方のために、まず全体像を比較表でご覧ください。

注射の種類 主な目的 効果の速さ 効果の持続 回数の目安 費用(目安) 保険適用
ヒアルロン酸注射 関節の潤滑・保護 数回後に徐々に 数週間〜数か月 週1回×5回(1クール) 1回500〜1,500円(3割) あり
ステロイド注射 炎症の抑制・即効鎮痛 数時間〜翌日 数日〜数週間 年3〜4回が上限目安 1回500〜2,000円(3割) あり
PRP注射 組織修復・炎症抑制 1〜2週間後 数か月〜1年 1〜3回程度 5〜15万円/回 なし(自費)
幹細胞注射(再生医療) 損傷組織の修復・再生 1〜3か月後 1〜数年以上 1〜2回程度 80〜150万円 なし(自費)

この記事では、各注射について詳しく解説しながら、特に検索数が多いステロイド注射のセクションを重点的にご説明します。

ヒアルロン酸注射の特徴と効果

ヒアルロン酸の作用メカニズム

ヒアルロン酸は、もともと私たちの体内に存在する成分です。とくに関節液(かんせつえき)に多く含まれており、関節の動きをなめらかにする「潤滑油」のような役割を果たしています。

健康な膝関節では、関節液の中にヒアルロン酸が豊富に含まれています。しかし、変形性膝関節症が進行すると、関節液中のヒアルロン酸の濃度や質が低下してしまいます。その結果、関節の動きが悪くなり、軟骨同士がこすれ合って痛みが生じやすくなります。

ヒアルロン酸注射は、不足したヒアルロン酸を直接関節内に補充する治療法です。具体的には次のような作用が期待できます。

  • 関節の潤滑作用:関節液の粘り気(粘弾性)を回復させ、動きをスムーズにします
  • 軟骨の保護作用:軟骨の表面を覆い、すり減りを抑えます
  • 炎症を抑える作用:関節内の炎症反応をやわらげ、痛みを軽減します
  • 痛みの緩和:痛みを感じる神経への刺激を和らげます

効果が期待できる症状と適応

ヒアルロン酸注射は、初期から中期の変形性膝関節症に対してとくに効果が期待されます。

具体的には、以下のような症状がある方に適しています。

  • 膝の曲げ伸ばしで痛みを感じる
  • 歩き始めや階段の上り下りで膝が痛む
  • 膝に水がたまりやすい
  • 膝がこわばって動かしにくい
  • 正座がしづらくなってきた

一方で、軟骨がほとんどなくなってしまった重度の変形性膝関節症では、ヒアルロン酸注射だけでは十分な効果が得られにくい場合があります。

効果が出やすい人・出にくい人の特徴

ヒアルロン酸注射の効果には個人差があります。以下のような傾向が知られています。

効果が出やすい方の特徴:

  • 変形性膝関節症の初期段階にある方
  • 膝のレントゲンで関節の隙間(軟骨)がまだ残っている方
  • 膝の変形が軽度の方
  • 日常生活で適度な運動習慣がある方

効果が出にくい方の特徴:

  • 変形性膝関節症がかなり進行している方
  • 膝の変形(O脚など)が強い方
  • 体重が膝に大きな負担をかけている方
  • 関節内の炎症が非常に強い状態の方

O脚が気になる方は、O脚と変形性膝関節症の関係についての記事もあわせてご覧ください。

ヒアルロン酸

ヒアルロン酸注射の回数・頻度・効果持続期間

投与スケジュールの目安

ヒアルロン酸注射は、一般的に週1回のペースで合計5回を1クールとして行います。これは保険診療で認められている標準的なスケジュールです。

5回の注射を終えた後は、症状に応じて2〜4週間に1回のペースで維持療法として続ける場合もあります。効果の持続には個人差がありますが、1回の注射で数日から数週間ほど痛みが和らぐ方が多いです。

何回まで打てる?打ち続けた場合のリスク

ヒアルロン酸注射には、ステロイド注射のような厳格な回数の上限は設けられていません。体内にもともと存在する成分であるため、長期間にわたって継続しても重大な副作用が起こるリスクは比較的低いとされています。

ただし、注射を繰り返すこと自体にわずかなリスクは伴います。

  • 注射部位からの感染(まれですが可能性はあります)
  • 注射のたびに関節に針を刺す負担
  • 効果が感じられないまま漫然と続けてしまう可能性

そのため、主治医と相談しながら定期的に効果を評価し、治療方針を見直すことが大切です。

やめるべきタイミングの判断基準

「いつまで注射を続けるべきか」は多くの患者さんが悩むポイントです。以下のような場合は、主治医に相談のうえ治療方針の見直しを検討してもよいでしょう。

  • 3〜5回の注射を行っても痛みの改善が実感できない場合
  • 注射後の効果の持続時間がだんだん短くなっている場合
  • 注射をしても日常生活での支障が変わらない場合
  • 膝の変形が進行してきた場合

注射の効果が薄れてきたと感じたときは、無理に続けるのではなく、次のステップとなる治療法について医師と話し合うことをおすすめします。

ヒアルロン酸注射の副作用と注意点

ヒアルロン酸注射は比較的安全性の高い治療ですが、以下のような副作用が起こることがあります。

  • 注射部位の痛み・腫れ:注射後に一時的に膝が重く感じたり、軽い痛みが出ることがあります。通常は1〜2日で治まります。
  • アレルギー反応:非常にまれですが、ヒアルロン酸に対するアレルギー反応が起こる可能性があります。発疹やかゆみが出た場合はすぐに医師に相談してください。
  • 関節内の感染:針を刺す処置のため、ごくまれに細菌感染が起こることがあります。注射後に膝が急に赤く腫れたり、強い痛みが出た場合は早めに受診してください。

注射後の生活における注意点:

  • 注射当日の激しい運動は避けましょう
  • 入浴は当日から可能ですが、長時間の入浴や熱いお湯は避けるのが安心です
  • 注射部位を強くこすったり、もんだりしないようにしましょう
  • 翌日以降は通常どおりの生活を送って問題ありません

ヒアルロン酸注射の費用と保険適用

ヒアルロン酸注射は、変形性膝関節症と診断された場合、健康保険が適用されます。保険適用であれば、患者さんの自己負担は1〜3割となります。

保険適用でのヒアルロン酸注射は、1回あたりの窓口負担が比較的少なく済むため、経済的にも続けやすい治療法です。ただし、保険適用にはいくつかの条件があります。

  • 医師による変形性膝関節症の診断があること
  • 使用する薬剤が保険適用のものであること
  • 投与回数・頻度が保険で定められた範囲内であること

なお、具体的な費用は医療機関や使用する薬剤により異なります。詳しくは受診先の医療機関にお問い合わせください。

日常生活での膝への負担を減らすために、インソール(靴の中敷き)を活用する方法もあります。インソールと膝の痛みについての記事もご参考にしてください。

サプリメント

ヒアルロン酸のサプリメントは膝に効く?

結論からお伝えすると、口から摂取するヒアルロン酸サプリメントが膝関節に直接届くという科学的根拠は、現時点では十分ではありません。

ヒアルロン酸は体内に入ると消化・分解されるため、サプリメントとして飲んだものがそのまま膝の関節液に届くわけではないのです。関節内のヒアルロン酸を補うには、注射で直接関節内に届ける方法が確実とされています。

もちろん、サプリメントの摂取自体が体に害になることは通常ありません。しかし、膝の痛みが気になる方は、サプリメントに頼るだけではなく、まず整形外科を受診して適切な診断と治療を受けることをおすすめします。

変形性膝関節症のステロイド注射とは

ステロイド注射の効果と適応

ステロイド(副腎皮質ホルモン)は、強力な抗炎症作用を持つ薬剤です。膝関節に注射すると、関節内の炎症をすばやく抑え、痛みや腫れを軽減します。

ステロイド注射は、以下のような場合に用いられます。

  • 膝の炎症が強く、腫れや痛みが激しい場合
  • ヒアルロン酸注射では痛みが十分に和らがない場合
  • 関節に水がたまり、日常生活に支障がある場合
  • すぐに痛みを取り除く必要がある場合(応急的な対応)

ステロイド注射の最大の利点は、効果の発現が早いことです。注射後、早ければ数時間〜翌日には痛みの改善を実感できることがあります。

ステロイド注射の副作用とリスク

ステロイド注射は効果が強い反面、注意すべき副作用もあります。

  • 軟骨への影響:繰り返し使用すると、軟骨の変性(すり減り)を進行させる可能性が指摘されています
  • 感染リスク:ステロイドは免疫を抑える作用があるため、注射後の感染リスクがやや高くなります
  • 皮膚の変化:注射部位の皮膚が薄くなったり、色素沈着が起こることがあります
  • 血糖値への影響:糖尿病の方では一時的に血糖値が上昇することがあります
  • 腱の脆弱化:周囲の腱(けん)が弱くなることがあります

これらの理由から、ステロイド注射は同じ関節への使用回数に制限があり、年に3〜4回程度が目安とされています。あくまで一時的な対処法として位置づけられています。

ステロイド注射の回数制限と理由

「なぜ回数に制限があるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。ステロイド注射を繰り返すと、以下のような問題が生じやすくなるためです。

  • 軟骨・骨への影響:ステロイドには軟骨細胞や骨の代謝を乱す作用があります。同じ関節に頻繁に注射すると、長期的に軟骨のすり減りを早める可能性があります
  • 関節構造の弱体化:関節を支える靭帯(じんたい)や腱が弱くなり、関節の不安定感につながることがあります
  • 感染リスクの増大:免疫抑制作用により、細菌が侵入した際に関節内で感染が広がりやすくなります
  • 全身への影響:糖尿病の悪化、骨粗しょう症の促進など、全身への副作用が蓄積する可能性があります

このため、同一関節への注射は年間3〜4回、かつ注射の間隔を少なくとも3か月以上あけることが推奨されています。「痛みがとれるからもっと打ちたい」と思う気持ちはよく理解できますが、長期的な膝の健康のために回数制限を守ることが大切です。

膝のステロイド注射が効かない場合の原因

「ステロイド注射を打ったのに効かない」「最初は効いたのに効かなくなってきた」というお悩みは少なくありません。ステロイド注射が効きにくくなる主な原因は以下の通りです。

1. 変形性膝関節症が進行している
軟骨がほとんど消失し、骨同士が直接当たっている状態では、炎症を抑えても痛みの根本原因が解決されないため、効果が出にくくなります。

2. 炎症以外に痛みの原因がある
膝の痛みは炎症だけが原因ではありません。神経の過敏化(痛みに対して神経が敏感になった状態)、筋肉のこわばり、骨の変形による機械的な刺激など、ステロイドでは対処できない痛みも存在します。

3. 注射の間隔が空きすぎている・少なすぎる
ステロイド注射は適切なタイミングで行うことが重要です。炎症のピーク時を外して注射しても効果が得にくく、逆に頻繁に打ちすぎると前項のリスクが高まります。

4. 個人の体質や反応の違い
薬に対する反応には個人差があります。ステロイドの効果が出にくい体質の方も一定数存在します。

ステロイド注射が効かない場合の対処法

ステロイド注射の効果が薄れてきた・効かない場合には、以下の対処法を医師と相談することをおすすめします。

対処法 概要 適した状況
ヒアルロン酸注射への切り替え・併用 炎症が落ち着いた後、ヒアルロン酸で関節環境を整える ステロイドで炎症は抑えられたが、動きが悪い場合
PRP(多血小板血漿)注射 自身の血液から成長因子を取り出して注射し、修復を促す ヒアルロン酸・ステロイドともに効果不十分の場合
幹細胞治療(再生医療) 自身の脂肪から幹細胞を培養して注射し、組織を修復する 保存療法全般の効果が乏しい中〜重度の方
運動療法・リハビリ 膝周囲の筋力強化、関節可動域の改善 あらゆる段階の方に並行して推奨
装具療法(サポーター・インソール) 膝への荷重バランスを改善し、痛みを軽減する O脚変形・歩行時の痛みが強い方

注射が効かなくなったからといって、すぐに手術しか選択肢がないわけではありません。注射と運動療法・装具療法を組み合わせることで、より効果的に症状をコントロールできる場合があります。

ステロイド注射後の生活・仕事復帰のタイムライン

「注射した後、いつから動けますか?」という質問はよくいただきます。一般的な経過をご説明します。

時間経過 状態・できること 注意事項
注射直後〜数時間 局所麻酔の成分で一時的に痛みが和らぐことがある。その後やや痛みが戻る場合も 激しい動作は避ける。安静を保つ
当日中 徒歩・事務作業は可能。デスクワークへの復帰は問題なし 激しいスポーツ・重いものを持つ作業は避ける
翌日〜2日後 多くの方で痛みの軽減を実感。軽いウォーキング可 膝に強い負荷をかける動作は控える
3日〜1週間 炎症が著しく改善。通常の日常生活が快適になる 効果を確認しながら活動量を調整
数週間〜数か月 効果の持続期間。徐々に痛みが戻ることがある 痛みが戻ったら主治医に相談。我慢しない

デスクワーク中心の仕事であれば、当日〜翌日から復帰できる方がほとんどです。立ち仕事や重労働の場合は、数日ほど様子を見ながら復帰することをおすすめします。

ヒアルロン酸注射とステロイド注射の違い

ヒアルロン酸注射とステロイド注射にはそれぞれ異なる特徴があります。以下の比較表をご参考にしてください。

比較項目 ヒアルロン酸注射 ステロイド注射
主な目的 関節の潤滑・保護 炎症の抑制・鎮痛
効果の発現 数回の投与後に徐々に実感 数時間〜翌日に実感しやすい
効果の持続 数週間〜数か月 数日〜数週間
回数の目安 週1回×5回(1クール)、維持療法あり 年3〜4回が上限の目安
副作用リスク 比較的低い 軟骨への影響、感染リスクあり
保険適用 適用あり 適用あり
適した状態 初期〜中期の慢性的な痛み 急性の強い炎症・痛み
仕事復帰の目安 翌日から通常通り 当日〜翌日(デスクワーク)

一般的には、まずヒアルロン酸注射で経過をみて、炎症が強い場合にステロイド注射を検討する、という流れが多く見られます。

ヒアルロン酸注射のメリット・デメリット

ヒアルロン酸注射を検討されている方のために、メリットとデメリットを整理します。

メリット:

  • 体内にもともとある成分のため、副作用が少ない
  • 保険適用で経済的な負担が抑えられる
  • 外来で手軽に受けられる(入院不要)
  • 繰り返し投与が可能で、長期的な管理に適している
  • 関節の潤滑・保護効果により、日常生活が楽になる方が多い

デメリット:

  • 即効性はステロイド注射ほど高くない
  • 効果には個人差があり、すべての方に同じ改善が見られるとは限らない
  • 定期的な通院が必要
  • 重度の変形性膝関節症には効果が限定的
  • 根本的な治療(軟骨の再生など)ではなく、あくまで痛みの緩和が中心

培養

注射治療の限界と次の選択肢

注射治療が「対症療法」である理由

ヒアルロン酸注射もステロイド注射も、膝の痛みや炎症を「和らげる」治療です。しかし、変形性膝関節症の本質である軟骨のすり減りそのものを回復させる効果はありません。

注射を続けることで長期間にわたって症状をコントロールできる方も多くいらっしゃいます。ただし、以下のような状況になった場合は、次のステップを検討するタイミングといえます。

  • 注射の効果持続時間がどんどん短くなってきた
  • 注射間隔を詰めないと日常生活に支障が出る
  • ステロイド注射の年間制限回数(3〜4回)に近づいてきた
  • 膝の変形が目立つようになってきた
  • 夜間も痛みで眠れないことがある

変形性膝関節症の薬物療法全般については、変形性膝関節症の薬についての記事でも詳しく解説しています。

PRP(多血小板血漿)療法

PRP(ピーアールピー)療法とは、患者さんご自身の血液から「血小板(けっしょうばん)」を多く含む成分を取り出し、それを膝関節に注射する治療法です。血小板には組織の修復を促す「成長因子(せいちょういんし)」が豊富に含まれており、関節内の炎症を抑えたり、傷んだ組織の回復を助ける効果が期待されています。

PRP療法のポイントは以下のとおりです。

  • 自分の血液を使うため、アレルギーや拒絶反応のリスクが極めて低い
  • 採血と注射だけで完了するため、入院は不要
  • ヒアルロン酸注射が効きにくくなった方にも効果が期待できる場合がある
  • 現時点では自費診療(保険適用外)となります

費用の目安は1回5〜15万円程度で、医療機関によって異なります。

自己脂肪由来の幹細胞治療(再生医療)

幹細胞治療は、患者さんご自身の脂肪から「幹細胞(かんさいぼう)」を取り出し、培養したうえで膝関節に注入する再生医療です。幹細胞には、傷ついた組織を修復し、炎症を抑える働きがあります。

ヒアルロン酸注射やPRP療法が痛みの「緩和」を目指す治療であるのに対し、幹細胞治療は損傷した組織そのものの「修復」を目指すという点が大きな違いです。

  • 自分の細胞を使うため、副作用のリスクが低い
  • 手術を受けずに再生医療を受けられる
  • 注射が効かなくなった方や、手術を避けたい方に選ばれている
  • 自費診療(保険適用外)となります

大切なのは「何歳の細胞か」ではなく、「どのように培養されたか」です。当院では独自の培養技術によって、高品質な幹細胞を安定的に提供しています。注射治療で効果が実感できなくなった方は、お気軽にご相談ください。

手術(人工関節・骨切り術)

保存療法や再生医療でも改善が見られない場合には、手術が検討されることがあります。代表的な手術法は以下の2つです。

  • 人工関節置換術:傷んだ関節の表面を人工の部品に置き換える手術です。痛みの大幅な軽減が期待できますが、入院やリハビリが必要です。
  • 高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ):すねの骨の角度を変えて、膝への荷重のかかり方を調整する手術です。比較的若い方や活動量の多い方に適しています。

手術にはそれぞれメリットとデメリットがあります。担当医とよく相談し、ご自身の生活スタイルや希望に合った治療法を選ぶことが大切です。

注射治療と併用すべきセルフケア

注射治療の効果を最大限に引き出すためには、日常生活でのセルフケアが欠かせません。

運動療法・ウォーキングの重要性

膝周囲の筋肉(とくに太ももの前側の筋肉「大腿四頭筋」)を鍛えることで、膝への負担を軽減できます。注射で痛みが和らいだタイミングで、適度な運動を取り入れることが推奨されています。

ウォーキングは変形性膝関節症のリハビリにも効果的です。ウォーキングと膝の痛みについての記事では、膝に優しい歩き方のポイントを詳しく解説しています。また、膝に良い歩き方の記事もあわせてご参照ください。

体重管理と膝への負担

体重が1kg増えると、歩行時には膝に約3〜4kgの余分な負担がかかるといわれています。注射治療と同時に体重管理に取り組むことで、注射の効果がより長く続きやすくなります。

インソール・サポーターの活用

靴の中敷き(インソール)や膝サポーターを適切に使うことで、膝への負担を分散させることができます。インソールの選び方と膝の痛み軽減についての記事もご参考にしてください。

変形性膝関節症の予防・進行抑制

注射治療と並行して、膝の悪化を防ぐための生活習慣の見直しも大切です。変形性膝関節症の予防についての記事では、日常生活でできる予防策を詳しくご紹介しています。

実際の治療の流れ(来院から経過観察まで)

「初めて注射を受けるとき、どんな流れになるの?」という疑問にお答えします。

初回来院から注射までの流れ

ステップ 内容 所要時間の目安
1. 問診・診察 症状の詳細を確認。いつから、どんな動作で痛むか、生活への影響などを伺います 15〜20分
2. 画像検査(X線) 膝のレントゲン撮影。軟骨の減り具合、骨の変形、関節の隙間などを確認します 10〜15分
3. 治療方針の説明 検査結果をもとに、どの注射が適切か、何回打つ予定か、期待できる効果などをご説明します 10〜15分
4. 注射処置 膝に消毒をしてから注射を行います。水がたまっている場合は先に抜いてから注入します 5〜10分
5. 処置後の説明・会計 注射後の注意事項(運動制限、入浴など)をお伝えします 5〜10分

2回目以降の通院スケジュール

ヒアルロン酸注射の場合、週1回×5回を1クールとします。1クール終了後は症状に応じて通院間隔を調整します。

ステロイド注射の場合は、急性の炎症が落ち着いたら、その後はヒアルロン酸注射や運動療法に切り替えることが一般的です。

経過観察のポイント

注射治療中は、以下の点を観察・記録しておくと、次回の診察で医師に正確に伝えることができます。

  • 注射後何日目から効果を実感したか
  • 効果がどのくらいの期間続いたか
  • 注射後に気になる症状(腫れ、熱感、発赤など)がなかったか
  • 日常生活でどの動作がどの程度楽になったか

注射の費用比較:保険適用 vs 自費

治療を選ぶうえで費用は重要な要素です。4種類の注射について詳しく費用を比較します。

注射の種類 保険適用 1回あたりの費用目安 1クールの総費用目安 備考
ヒアルロン酸注射 あり(3割負担) 500〜1,500円(3割) 2,500〜7,500円(5回) 診察代・検査代は別途
ステロイド注射 あり(3割負担) 500〜2,000円(3割) 年3〜4回まで 水抜き処置が加わる場合あり
PRP注射 なし(全額自己負担) 5〜15万円 5〜30万円(1〜3回) 医療機関により大きく異なる
幹細胞注射(再生医療) なし(全額自己負担) 80〜150万円 80〜150万円(1〜2回) 培養コストを含む。施設・培養方法により異なる

ヒアルロン酸注射とステロイド注射は保険診療のため、経済的な負担が少なく始められます。PRP・幹細胞治療は自費診療となりますが、注射治療で効果が得られなくなった場合の次のステップとして検討する価値があります。

よくある質問(FAQ)

ヒアルロン酸注射は痛いですか?

注射の際に針を刺すときの痛みはありますが、多くの方が「思ったより痛くなかった」とおっしゃいます。使用する針は細いものを使い、痛みをできるだけ少なくする工夫をしています。膝に水がたまっている場合は、先に水を抜いてからヒアルロン酸を注入することもあります。不安な方は、事前に担当医にご相談ください。

ステロイド注射は何回まで打てますか?

同じ関節への使用は年間3〜4回程度が目安です。これは、繰り返し使用することで軟骨へのダメージや感染リスクが高まるためです。注射と注射の間隔も最低3か月以上あけることが推奨されています。この制限を超えて打ち続けることは、長期的に膝の状態を悪化させる可能性があるため、担当医と相談しながら治療方針を決めることが重要です。

膝のステロイド注射が効かなくなってきたのですが、どうすればいいですか?

効かなくなってきた場合には、いくつかの原因が考えられます。変形性膝関節症の進行、炎症以外の痛みの原因(神経の過敏化など)、注射の回数上限への到達などが主な理由です。ステロイド注射の効果が薄れてきた方には、PRP療法や幹細胞治療(再生医療)などの次のステップを検討することをおすすめします。注射治療の限界がある場合でも、手術以外の選択肢が存在します。

注射後に運動や入浴はできますか?

注射当日は激しい運動(ランニング、ジャンプなど)は避けてください。ウォーキング程度の軽い活動は問題ありません。入浴も当日から可能ですが、長時間湯船に浸かることは避け、シャワー程度にとどめるのが安心です。翌日以降は通常の生活に戻っていただいて大丈夫です。

ヒアルロン酸注射とPRP注射はどちらが良いですか?

それぞれ特徴が異なるため、一概にどちらが良いとは言えません。ヒアルロン酸注射は保険適用で費用が抑えられ、初期〜中期の方に広く使われています。PRP注射は自費診療ですが、ヒアルロン酸では効果が十分でない方にも改善が期待できる場合があります。症状や膝の状態に応じて、医師と相談のうえ選択されることをおすすめします。

両膝に同時に注射できますか?

はい、両膝に同時にヒアルロン酸注射を行うことは可能です。両膝に痛みがある方は、1回の通院で両方の治療を受けられるため、通院の負担を減らすことができます。ステロイド注射の場合も両膝への同時投与は可能ですが、副作用のリスクを考慮して医師が判断します。

注射治療で効果がなかった場合、手術しかないのですか?

注射治療で効果が不十分だった場合でも、手術がすぐに必要になるわけではありません。PRP療法や幹細胞治療(再生医療)といった選択肢があります。また、運動療法・装具療法・体重管理など、保存療法の工夫でまだできることが残っている場合も多くあります。担当医や専門医(再生医療専門クリニックなど)に相談することをおすすめします。

変形性膝関節症の注射治療で使う薬の種類はどう違いますか?

ヒアルロン酸注射で使用する薬剤は、主に分子量(大きさ)によって種類が分かれています。一般的には分子量が大きいほど粘弾性が高く、効果の持続時間が長い傾向があるとされています。ステロイド注射で使用する薬剤にも複数種類があり、短時間作用型から長時間作用型まであります。どの薬を使用するかは、症状・炎症の程度・患者さんの状態によって医師が判断します。詳しくは変形性膝関節症の薬についての記事もあわせてご覧ください。

まとめ

変形性膝関節症の注射治療には、ヒアルロン酸注射・ステロイド注射・PRP注射・幹細胞注射の4種類があります。それぞれに特性があり、症状の段階や目的に応じて使い分けることが大切です。

注射治療を選ぶ際のポイントをまとめると:

  • 初期〜中期の慢性的な痛み→ まずはヒアルロン酸注射(保険適用)
  • 急性の強い炎症・腫れ→ ステロイド注射(年3〜4回まで)
  • ヒアルロン酸・ステロイドが効かなくなってきた→ PRP療法を検討
  • より根本的な改善を目指したい→ 幹細胞治療(再生医療)を検討

注射治療はあくまで痛みの「緩和」が目的であり、軟骨のすり減りそのものを治す根本治療ではないという点を理解しておくことが大切です。注射の効果が薄れてきた、あるいはもっと積極的な治療を検討したいという方には、再生医療という新しい選択肢もあります。

大切なのは「何歳の細胞か」ではなく、「どのように培養されたか」です。当院では、患者さんお一人おひとりの症状や生活に合わせた治療法をご提案しています。膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

No.0019

監修:院長 坂本貞範

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