腱板損傷のテスト(検査法)7選|自分でできるチェック方法と治療法を整形外科医が解説

この記事の監修医師

院長 坂本貞範(整形外科専門医)
医療法人美喜有会 リペアセルクリニック / 治療実績14,000例以上

この記事の結論

腱板損傷の診断には、Drop arm test・Empty can test・Neer test・Hawkins test・Lift-off test などの徒手検査が用いられます。腕を上げるときの痛みや力の入りにくさが主な判定ポイント。確定診断には MRI または超音波検査(エコー)が必要ですが、本記事では自分でできるセルフチェック方法と、保存療法・手術・再生医療の選択肢までを整理します。

肩の腱板とは?構造と役割

腱板とは肩関節を覆う4つの筋腱(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)の総称で、肩の安定性と回旋運動を担っています。英語では Rotator Cuff(ローテーターカフ)と呼ばれ、肩関節の深層で上腕骨頭を支える構造体です。

肩関節は人体で最も可動域の広い関節ですが、その分だけ構造的に不安定で、腱板が壊れると著しく機能が低下します。4つの筋腱のなかでも棘上筋は、腕を横に広げる(外転する)動作の最初の15度を担う重要な筋で、腱板損傷の約80%はこの棘上筋腱から発症するとされています(日本整形外科学会「肩腱板断裂」より)。

腱板損傷の症状は?

肩を上げるときの痛み、夜間痛、腕に力が入りにくいといった症状が特徴です。四十肩・五十肩と異なり、関節の拘縮(固まって動かなくなる状態)は少なく、痛みのない方の手で支えれば腕を上げられることが多いのが特徴です。

  • 肩を動かすと痛みや引っかかり:特に60〜120度の範囲で痛みを感じる
  • 夜間痛:寝返りや患部を下にすると痛みで目が覚める
  • 腕に力が入らない:急性断裂では「プチッ」「バキッ」といった音が鳴ることも
  • 結帯動作の制限:腕を後ろに回して背中を触る動作が困難
  • 進行した例では棘上筋の萎縮:肩甲棘上部がへこんで見える

症状が軽度の場合、四十肩・五十肩や肩こりとして放置されることが多く、診断が遅れるケースも少なくありません。夜間痛や筋力低下が2週間以上続く場合は整形外科への受診を推奨します。

腱板損傷を調べる検査テスト7選

整形外科では以下の徒手検査で腱板損傷を評価します。痛みの部位や筋力低下のパターンから、4つのうちどの筋腱が損傷しているかを特定します。確定診断にはMRIや超音波検査を併用します。

1. Drop arm test(ドロップアームテスト)

目的:棘上筋腱断裂の有無
方法:検者が患者の腕を90度外転位まで持ち上げ、その位置でサポートを外して患者自身にその姿勢を保持させる。
陽性所見:腕を保持できず急に落下する/痛みで耐えられない
意味:完全断裂の存在を示唆する古典的な検査です。

2. Empty can test(エンプティカンテスト、Jobe test)

目的:棘上筋の筋力評価
方法:患者に両腕を90度外転、30度水平屈曲、親指を下に向けた姿勢(空き缶を逆さに持つような姿勢)で保持させ、検者が上から抵抗を加える。
陽性所見:筋力低下、痛み
意味:棘上筋腱の損傷感度が高い検査です。

3. Full can test(フルカンテスト)

目的:棘上筋の筋力評価(Empty can より安全な変法)
方法:親指を上に向けた姿勢で同様に抵抗を加える。
陽性所見:筋力低下、痛み
意味:Empty can より肩峰下インピンジメントを誘発しにくく、患者の負担が少ない検査です。

4. Neer test(ニアテスト)

目的:肩峰下インピンジメント徴候の評価
方法:検者が患者の後方に立ち、一方の手で肩甲骨を上から押さえつつ、もう一方の手で患者の腕を内旋位で他動的に最大挙上させる。
陽性所見:挙上途中での痛み
意味:腱板と肩峰の衝突(インピンジメント)による症状を再現する検査です。

5. Hawkins test(ホーキンステスト)

目的:肩峰下インピンジメント徴候の評価
方法:検者が患者の腕を肘90度屈曲・肩90度前方挙上位で保持し、肩を強制的に内旋させる。
陽性所見:肩前上方の痛み
意味:Neer test と同様にインピンジメント徴候を評価しますが、角度が異なるため併用されます。

6. Lift-off test(リフトオフテスト、Gerber test)

目的:肩甲下筋腱の損傷評価
方法:患者に手背を腰の後ろに当てさせ、その手を腰から離すよう指示する。
陽性所見:手を腰から離せない/離す力が弱い
意味:肩甲下筋腱(4腱板のうち前方を構成する筋)の断裂を検出する検査です。

7. External rotation lag sign(外旋ラグ徴候)

目的:棘下筋・小円筋(後方腱板)の断裂評価
方法:検者が患者の肘を90度屈曲位で他動的に最大外旋させた後、手を離し患者自身に保持させる。
陽性所見:外旋位を保持できず内旋方向に戻ってしまう
意味:棘下筋腱や小円筋腱の断裂を示唆します。

徒手検査の比較表

テスト名 対象筋腱 方法のキーワード 陽性所見
Drop arm test 棘上筋 90度外転から下ろす 落下/痛み
Empty can test 棘上筋 親指下向きで抵抗 筋力低下/痛み
Full can test 棘上筋 親指上向きで抵抗 筋力低下/痛み
Neer test インピンジメント 内旋位で最大挙上 挙上時痛
Hawkins test インピンジメント 前方挙上位で強制内旋 肩前上方の痛み
Lift-off test 肩甲下筋 腰の後ろから手を離す 離せない/力弱い
External rotation lag 棘下筋・小円筋 最大外旋位で保持 内旋に戻ってしまう

自分でできる腱板損傷セルフチェック

医療機関を受診する前に、自宅で簡易にできるセルフチェックが3つあります。ただし最終的な診断は必ず整形外科医による診察と画像検査で行う必要があります。

  1. 痛みの弧(Painful arc)テスト:壁に立ち、痛い方の腕をゆっくり横から挙上。60〜120度の範囲で痛みや引っかかりを感じたら疑わしい
  2. Drop arm セルフ版:腕を反対の手で90度まで持ち上げてもらい、その位置から自力で保持できるか確認。落ちてしまう・強い痛みが出るなら陽性の可能性
  3. 結帯動作テスト:両手を背中の腰より上に回し、反対の手で届く高さを左右比較。損傷側が明らかに上に届かないなら要受診

セルフチェックで疑いがある場合は、整形外科で MRI または超音波検査 による確定診断を受けてください。

画像診断(MRI・エコー・レントゲン)

徒手検査で腱板損傷が疑われた場合、MRIまたは超音波検査で確定診断を行います。レントゲン(単純X線)は骨しか写らないため、腱板そのものの評価はできませんが、骨棘や関節裂隙の変化を確認する目的で併用されます。

レントゲン(単純X線)

骨のみ描出。肩峰下骨棘や関節裂隙狭小化など、二次的変化を確認できます。

MRI(磁気共鳴画像)

腱板の部分断裂・完全断裂・筋腹の萎縮(脂肪変性)まで高精度に評価可能。手術適応の判定には必須の検査です。

超音波検査(エコー)

無侵襲・短時間で実施でき、動的評価(腕を動かしながらの観察)が可能。リアルタイムで腱の動きや滲出液の有無を確認できるため、スクリーニングに有用です。

四十肩・五十肩との違いは?鑑別ポイント

腱板損傷と四十肩・五十肩は初期症状が似ていますが、拘縮(関節の固まり)の有無と他動運動の可否で鑑別されます。

項目 腱板損傷 四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)
主因 外傷/加齢性変性 関節包・滑液包の炎症と癒着
好発年齢 40代〜70代 40代〜50代
他動挙上の可否 痛みはあるが可能(拘縮少) 拘縮により制限
Drop arm test 陽性になることがある 原則陰性
画像所見 MRIで腱板断裂確認 画像では明らかな異常少
自然経過 自然治癒しにくい 1〜2年で軽快することが多い

腱板損傷の治療法

腱板損傷の治療は、保存療法(薬物・リハビリ・注射)からスタートし、効果不十分な場合に手術療法(関節鏡視下腱板修復術)が検討されます。近年は再生医療(幹細胞治療・PRP療法)も新しい選択肢として注目されています。

保存療法

  • 安静・三角巾固定:急性期の炎症緩和
  • 薬物療法:NSAIDs(ロキソプロフェン、セレコキシブ等)、外用湿布
  • 関節内ステロイド注射:炎症が強い場合の短期使用
  • ヒアルロン酸注射:関節液の粘弾性を補い、可動域改善を促す
  • リハビリテーション:棘上筋・僧帽筋下部・前鋸筋の強化、肩甲骨アライメント改善、ストレッチング

手術療法(関節鏡視下腱板修復術 ARCR)

Arthroscopic Rotator Cuff Repair(ARCR)は、小さなカメラを関節に入れる鏡視下手術で、スーチャーアンカー(糸付きビス)を上腕骨に埋め込み、断裂した腱を骨に縫着する術式です。直視下手術に比べて侵襲が小さく、術後の回復が早いのが利点です。

  • 手術時間:1〜2時間程度
  • 入院期間:施設により異なるが短期入院が一般的
  • 術後固定:装具3〜6週間(断裂サイズにより変動)
  • スポーツ復帰:術後4〜6ヶ月

再生医療(幹細胞治療・PRP療法)

自身の体から採取した細胞・血液成分を用いて、損傷部位の修復や炎症軽減をサポートすることが期待される治療法です。手術を避けたい患者や保存療法で改善しない部分断裂例への新しい選択肢として注目されており、厚生労働省の再生医療等安全性確保法に基づく届出医療機関で実施されます。自由診療(保険適用外)です。適応の可否については担当医に個別にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 腱板損傷は自然に治りますか?

A. 完全断裂の場合、自然に腱が再接合することは原則なく、自然治癒しにくい疾患です。部分断裂や炎症主体の病態では保存療法で症状が軽快することがありますが、放置すると断裂が拡大する可能性もあります。症状が続く場合は必ず整形外科で画像診断を受けてください。

Q2. 腱板損傷のテストは自分でもできますか?

A. 痛みの弧テスト・Drop arm のセルフ版・結帯動作比較の3つは自宅で試せます。ただし、これらはあくまで「疑わしいか否か」のスクリーニングであり、確定診断は必ずMRIや超音波検査を用いた医療機関での検査が必要です。

Q3. 腱板損傷と四十肩の見分け方は?

A. 最大の違いは「拘縮の有無」と「他動挙上の可否」です。腱板損傷は痛みはあっても他人が支えれば腕を挙げられ、結帯動作も部分的には可能です。四十肩・五十肩は肩関節そのものが固まり、他動でも動かせません。鑑別にはMRIも有用です。

Q4. 腱板損傷で手術が必要なケースはどんな時ですか?

A. ①完全断裂、②保存療法を3〜6か月継続しても改善しない、③スポーツや仕事で肩の機能が必要、④急性外傷による若年発症、などのケースで手術が検討されます。断裂サイズ・患者の年齢・活動レベル・MRIでの筋腹脂肪変性の程度を総合的に評価して決定します。

Q5. 腱板損傷のリハビリ期間はどのくらいですか?

A. 保存療法では症状軽快まで3〜6か月が目安です。手術後は装具固定3〜6週間、その後段階的にリハビリを進め、日常生活動作復帰まで3〜4か月、スポーツ復帰まで4〜6か月が一般的です。断裂サイズや個人差により変動します。

Q6. 腱板損傷は何科を受診すればよいですか?

A. 整形外科、特に肩関節専門医のいる医療機関の受診を推奨します。肩専門の整形外科では、徒手検査と超音波検査を外来で即日実施できることが多く、診断までのスピードが早いという利点があります。

まとめ

  • 腱板損傷のテスト(検査法)は Drop arm・Empty can・Full can・Neer・Hawkins・Lift-off・External rotation lag sign の7種が代表的
  • 痛みの弧・Drop armセルフ版・結帯動作比較の3つは自宅でもスクリーニング可能
  • 確定診断はMRIまたは超音波検査で行う
  • 四十肩・五十肩との鑑別は拘縮の有無と他動挙上の可否がポイント
  • 治療は保存療法から開始し、効果不十分なら関節鏡視下腱板修復術(ARCR)
  • 再生医療(幹細胞治療・PRP療法)は新しい選択肢として注目されている

肩の痛みや腕が上がらない症状でお困りの方は、当クリニックまでお気軽にご相談ください。

この記事について

本記事は、リペアセルクリニック院長 坂本貞範(整形外科専門医)が監修しています。当クリニックでは14,000例以上の治療実績があります。

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参考文献

  1. 日本整形外科学会「肩腱板断裂」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html
  2. 日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html
  3. 日本肩関節学会 https://www.j-shoulder-s.jp/
  4. 厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/index.html
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