骨粗鬆症による椎体圧迫骨折の手術法

高齢者の人口が増加する中、骨粗鬆症を原因とする疾患も急増しており、その中でも脊椎の圧迫骨折は最も頻度の高い疾患の一つです。最近では「いつの間にか骨折」という代名詞があるくらい知名度も上がっています。今回はこの椎体の圧迫骨折で行われる手術法について説明します。

椎体形成術(vertebroplasty)

椎体形成術は早期に疼痛の改善が得られるという報告もありますが、疾患に対してどの時期に適応すべきかという指標が示されていません。また生体親和性のない骨セメントを注入することへの危惧やセメントモノマーによる毒性のおそれなどもあります。

ヨーロッパでは受傷後早期から疼痛の改善が得られる方法として、経皮的に椎弓根や椎体外側よりPMMA(polymethylmethacrylate) セメントを骨折椎体内に注入を行う椎体形成術 (vertebroplasty)が放射線科医を中心に行われていて、最近では日本でも実施例が増えてきています。

日本で考案されたリン酸カルシウム骨セメント(CPC:calcium phosphate cement)は、生体活性を促し骨に置き換えます。基本的には全身麻酔下で脊椎後方を展開し、経椎弓根的に椎体内を掻き出した後にCPCを注入します。

このCPCを注入する椎体形成術も現在のところ新鮮骨折(急性期の骨折)は適応されていません。その理由として、骨に置き換えられるには骨折面を新鮮化する必要があることと、CPCの性状のために経皮的注入が困難なことが挙げられます。

後弯形成術(kyphoplasty)

バルーン椎体形成術後弯形成術(kyphoplasty)とは、経椎弓根的に特殊なバルーンを挿入して潰れてしまった椎体の前方を元の椎体高に復元した後、PMMAセメントを注入するものです。この後弯形成術は正常な弯曲に戻すことを可能なのが特徴であり、骨折以前の脊椎弯曲を元に戻していきます。

しかし1つの椎体のみの強度を上げることは他の椎体に大きな負担がかかり、骨折を誘発するおそれもありますので長期的な評価が必要です。

椎体圧潰(偽関節)に対する手術椎体後壁の骨折と椎体偽関節

以前の椎体圧迫骨折は予後が良好なものと考えられていましたが、1987年の Maruoらによる報告のころから、偽関節と診断される症例が急速に増加してきました。この増加の理由としては高齢者の増加のほかに、MRIが普及したことや椎体偽関節という病態が認識されてきたことと考えられています。

臨床経過としては、通常の圧迫骨折治療により症状がいったん改善した後に継続する激しい背部痛や麻痺を生じるものですが、徐々に症状が現れることもあり、はっきりとした発症時期がわからないものもあります。いったん麻痺症状が出ると、手術を選択される場合が多いです。手術では前方固定術や脊椎後方短縮術などの除圧と固定を併用した手術が行われてます。

前方固定術は偽関節となった部位を直接修復することで、正常部位の破壊がない点が挙げられます。また脊椎後方短縮術では、整形外科医が得意とする後方進入による手術という点で優れています。通常の後方固定術では不十分なインストゥルメンテーション固定力を高めたり、後弯変形を矯正する目的で脊椎後方部分の短縮を行います。しかし本術式であっても骨粗鬆症となった脊椎に対する固定術には限界があります。

 

No.0036

監修:院長 坂本貞範
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